小説：見えない残－zan－
そっと目を開けると
リビングとの間にある引き戸の隙間から、カッターナイフを差し込んだような光が入っていた。
「ココニアルキイタ？」
片言の日本語が聞こえる。
裏声？
細く冷たい声。
そんな姿が頭の中に浮かんだ。
ついでにニット帽でも被ってる？
季節は夏なのに。
そして、残酷。
オレは金縛りにあったかのように身動き出来なかった。
部屋は真っ暗。
でも少しずつ目が慣れてきたかな。
ここは、確かにオレが住んでるマンション。
オレの寝室。
いつもの布団。
手足は自由。
でも動かさない。絶対に。
音立てるとヤバいでしょ。
オレの直感がそう叫ぶ。
息苦しい。
だって呼吸の音が聞こえたらマズイでしょ。
ちょっと待てって。
現状把握しよう。
今何時？
左側の壁に掛かってある百均の時計にそっと目をやった。
コチコチうるせぇよ安もんが！
頭の中で白い淡白なデザインの時計に怒鳴りながら、3時を確認した。
夜中だ。間違いなく。
ということは、３時間弱寝たのか。
仕事から帰ってきて、メシ食って、何食べたっけ・・・・・・
あ！コンビニのタンドリーチキンとクリームチーズの菓子パンだ。
あとヨーグルト。アロエ入りの。
いつもの癖で、飲むヨーグルトじゃないのに、飲むように掻き込んだっけ。
そんなに満腹感なかったな。
その後、スマホでTwitterチェックしてからヤフーニュース見たっけ。
んでシャワー浴びて（お風呂にしとけば良かったよ）
オレンジジュース飲んで、パソコンでちょっと作業して、疲れたから寝た。
全部電気消して。
いつもの布団で。
オレ独身で一人暮らし。
彼女？
いるけど何か？
すんげえ可愛いよ。自慢するわ。
たまに泊りに来るけど、今日は一人。
そう、この301号室の空間にはオレ一人のはず。
誰？
「部屋間違ったかも。すんません。」
「マチガテタラ、ツメゼンブハグ。」
「勘弁して下さい。情報聞いた通りのはずで……もう少し探さして下さい。」
「イイワケワカラナイ。ジカンカカルハヨクナイ。」
「くそ。どこにあんだよ！」
ガタッガタン！！！
階下に響くくらいに大きな物音で何かが床に落ちた。
いや、落としたんだろう。
オレの家の物を。
ビックリして反射的に振り上げた左手が、スマホの充電器に触れた。
ヤバイ。
その瞬間、机の上に置いてあった充電中のスマホが落下した。
トンッ！
カーペットの上に落ちたスマホは、手帳カバーが開き、明かりが点いていた。
その明かりも一瞬でわからなくなった。
勢いよく開けられた部屋の扉から入ってきた光が眩しくて。
けど、わかったことがある。
オレを含めて、今ここに4人の人間が存在するということが…。
続く
本日もブログをご覧頂き、本当にありがとうございました。
【プロフィール】
『あなたの心と身体の健康を守りたい』
☆ゆう＠心と身体の健康コンサルタント☆
・マインドアップ＆ヘルシースクール代表
・医療関係職種（国家資格所有）
・心と身体の健康について研究
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